朝ハーゲン

 久しぶりにブログを書いてみようと思ったのは、何でもいいのでとにかく無駄な文を生産したかったからだ。GW中、買い物以外はずっと家に引きこもっており、薄汚い部屋の中で忘れかけた日本語をもう一度取り戻したかった。焦燥感に焼かれる4月とは異なり、5月の気候はそういう無駄を許してくれるような気がする。書くべきことを何も持ち合わせていないが、進めていくうち自分の気持ちが分かるだろう。

 で、何年かぶりにこのブログを引っ張り出した。今見返すと、2014年ごろは自分にしてはよく文章を書いていたように思う。当時私はドラマに出てくる男性同士のBL(いわゆるナマモノというやつだ)にハマっており、ご多分に漏れず、ツイッター腐女子仲間と妄想を語り合っていた。ネットがすごく楽しくて、データ媒体のみではあるが同人誌みたいなものも出させてもらった。そんな中でこのブログを始めたのは気まぐれ…だけでなく、仲間に置いていかれたくなかったというのもあるかもしれない。当時の友人たちは皆絵が上手く、俳優の特徴をとらえた最高のイラストに加え、オシャレなオリジナル絵も作っていた。自分には無論そんな技術など一切なかったが、やろうと思えば延々とできる与太話を自己ヒョーゲンと勘違いして、ブログの文章を半ばなすりつけるような形で見てもらおうと思ったのだ。読み返すと吐き気に似たこっぱずかしさが込み上げてくるが(逆流性食道炎かもしれない)、あまり気負わず、好きにやれていた。楽しかったなあ。 

 そのツイッターアカウントも消してしまい、あの仲間たちとも疎遠になって早数年が経つ。最近よくその頃のこと、昔のことを考える。ネットで男同士の恋愛について開陳し、それ以外の休日の時間は、地元の岡山県立図書館に通って本棚の位置と中身を覚えていった。またしばしば父の運転する車でくら寿司に行った。互いに干渉しない、没交渉な家族だが、皆で皿を入れてビッくらポン!をしているときだけは一つになれた。学校の勉強はかなり苦痛で、周囲にもそんなに馴染めなかったが、あのときの私は自分だけの聖域を何個か持っていた。だから何とかやってこれたのだ。

 なぜこんな時間に寝ずにこんなことを書いているのか、よく分からない。自分のような精神的老人の悪い癖なのだが、深夜にこの手の思い出話に耽り、頑なに現在を見ようとしないのである。美化された過去、武勇伝、そういったもの全てが結局は今の否定に繋がるのだろう。実際今の私は、聖域を一つずつ明け渡すような社会での生活にうんざりしている。授業中、教師から誇張された昔話を散々聞かされ、あんな大人には絶対ならねえぞと思っていたまさにその姿に今の自分はなっているのだ。これはよくない。

 やはりなんでもない日に外に出よう。長々と書いたがそれが結論である。それでたまには朝からハーゲンダッツ買って食べよう。クッキーアンドクリームを、晴れた日のベンチで。そうしてこの世の中のほんのわずかな場所を、不可侵な領域として、わが物顔で占拠するしかない。5月はそれをスペースの無駄とは言わないはずだ。

 こんなんオフラインの日記に書けよと自分でも思うが、顔も知らない誰かが、またかつての友人たちが読んでくれるかもしれないと考えるだけで嬉しいので、やはり公開する。