でんぐりがえしで明ける夜

わたしは小学生時代「口が軽くて目が固い」子供でした。言うことも聞かないし、ペラペラ家庭の事情を喋るし、夜も寝つかない。今思うと最低なガキです。焼肉から揚げ定食ハンバーグつき、メインディッシュ特盛ヤケクソメニュー、絶対に育てたくない24時、オールスター呪怨祭のような存在。岡山が生んだヤ爆弾(ヤバくだん)です。

 

じゃあ今はどうなのかというと、前二つはなんとか改善したように思いますが、残念ながら「夜寝つかない」というのは、以前にも増して悪化しているように思います。清々しい朝!なんて夢のまた夢で、呪詛のごとき目覚ましのベルを死者のような顔で止める毎日。もちろん昼間のテンションは高度0.3mくらい。

 

明らかに損ばかりなのに、なぜ寝つかないのか。

というのも、わたしの「目が固い」というのは筋金入りで、わたしの父母もその父母も「目が固い」のです。でもじゃあ睡眠時間が短くてもいい、ということでもこれまたなく………休日は昼まで寝ることが多いんですよね。夜、寝るのが嫌なんです。

 

いろいろ考えてみたんですが、おそらく夜は、何からも制限されないからじゃないかなあと。ヘトヘトになって帰ってきて、わたしはお風呂に入ってもいいし、ゴロゴロしてもいいし、ご飯を温めてもいい。Twitterをしようがドラマを見ようが、夜は誰からも何も言われない。そういう時間を睡眠に潰すのが損な気がしてるんですよね、たぶん。

 

でも、しばらく長い休みがとれたりすると、なぜかどうしようもなく「束縛されたい」と感じます。どこかの集団に属していたいし、ため息をつきながら陰鬱な目つきで満員電車に乗りたい。

ごくまれに、遠足や修学旅行に行きたいと感じることもあります。寝る間も惜しんで恋バナして、トイレのタイミングもお土産を買う時間も制限されて、それでも楽しい時間を過ごしたい。

とにかく、縛られてないぐうたらな自分を情けなく思っちゃうんですね。

 

そんなつらい夜は、布団の上ででんぐりがえしをします。何度も何度も、端から端を行ったり来たり。

そうすると、やがて目が回って、「わたしはさっきから何やってんだろう。疲れたな…」と感じるんです。ここが一番の狙い時。ラスト一本、今の自分ができる精一杯のでんぐりがえしをして、立ち上がる。そしてそのままカーテンを思いっきり開けてみる。大抵夜が明けてます。やうやう白くなりゆくビルぎはをしばらく眺めていると、でんぐりがえしで未来にタイムトラベルしたような、甘くて不思議な気持ちになるんです。夜の馬鹿げた疎外感なんか消え失せて。

 

これ、割と本気で言ってて、自殺しようとしてる人を三人くらいは救えるんじゃないかって思ってます。

でも、ベッド派の人はくれぐれも床でやるように。軌道がずれて頭から落ちたら、でんぐりがえ死しちゃいますからね。